◆ EMの畜産業への貢献と環境保全型農業への展望
◆ 基本的な飼育管理は必須条件
◆ EMの働きは環境をよくすることが主目的
◆ EMをテスト導入する場合
◆ EMの導入適期
◆ EMとは
◆ 畜舎環境における微生物相のバランスと効果
◆ 畜舎におけるEMの活用メリット(概念図)
◆ 【動画で見るEMの畜産利用】
◆ 【資料ダウンロード】畜産マニュアル<養鶏編><養豚編><酪農・肉牛編>
EMの畜産業への貢献と環境保全型農業への展望
EMが畜産に利用されて、10年以上たちます。当初は、悪臭を抑制する目的で使われていましたが、数多くの畜産農家が利用する中で様々な効果が出てきました。詳しくは後述しますが、生産性の向上、畜産物の品質向上などの家畜に対する直接的な効果と、悪臭抑制、家畜糞尿の有効利用などの間接的な効果の2つがあげられます。
この間接的な効果が、環境問題解決にとって重要な鍵となります。畜産業におけるEM利用の真価は、環境保全型農業ができ、自己完結(リサイクル)型、永続可能なシステムを確立させることです。例えば、EMが介在することによって家畜糞尿(有機物)を農地へ省力的に還元でき、家畜糞尿(有機物)の持つエネルギーを有効利用し、土壌に起こる障害を抑え、土壌の肥沃化を図ることが可能となり、草地に還元すれば、化学肥料を使わなくても草地の優良化が図られます。
本来、畜産業といえども農業の一部である以上、土から離れた畜産はあり得ないことを再認識しなければなりません。「卵は、鶏が生むのではなく、土が生むのである」「牛乳は、乳牛から搾るのではなく、土からとるのである。」という言葉があるように、すべての生物は土から生産される有機物によって生かされているのです。
従って、土台となるのは土であり、土とリンクしていなければ将来にわたっての畜産業の発展はあり得ないと考えています。
基本的な飼育管理は必須条件
畜産業では悪臭対策が最重要課題ですが、それと並んで家畜の健康維持、病気発生の軽減も大きな課題です。
この課題を解決するためには、基本的な飼育管理による良好な飼育環境を維持することが基本となります。
しかしながら、生産性を上げるための過度な密飼いは、ストレスからくる病気などの障害を引き起こす原因となり、その対策として抗生物質の多投や消毒剤の多用という悪循環に見舞われているのが現状です。
家畜からみると、このような状況は決して良好な環境とは言えません。現在の経営環境からは難しい現状にありますが、出来る限り飼育管理の環境を改善する必要があります。
EMの働きは環境をよくすることが主目的
本来動物は、野に放たれ自由に生活し、よい自然環境の中で健康に育っています。その理由の1つには、土と接することにより多種多様の微生物と出会いながら、生活をしていることがあげられます。しかし、現在の畜産業の飼育形態ではそれは難しく、土と家畜が離れてしまっています。それを補うのがEMです。EMは、土壌から抽出した有用微生物の集合体です。このEMを家畜に応用することによって、土と出会うことと同様の条件を整えることができます。これがEM活用の原点です。生きとし生けるものは、動物、植物にかかわりなく、微生物と共存共栄しているのです。食物連鎖の底辺を支えているのは土であり、その中に棲む最小生物の微生物です。
従って、EMは薬剤のような感覚で使用するのではなく、環境(畜舎内外、家畜体内)改善を目的に使用しなければなりません。また、EMは、生き物であり、ただ散布さえすれば求める効果が出るものではなく、EMが働きやすい環境づくりも同時に行う必要があります。EMを使用することによって、飼育環境を自然に近い状況に改善することができます。その視点に立ってEMを使用することが、より一層の効果を導き出すために重要となります。
EMをテスト導入する場合
EMの効果を確かめるためには、畜舎1棟単位で行って下さい。例えば、同一畜舎内を区切って行っても畜舎全体に先住している微生物の影響を受けやすく、明確な効果の差が現れないことがあります。決して薬剤的な使い方ではなく、生き物としての扱いが基本です。
従って、EMをテスト導入する場合でも、畜舎内全体のEM散布、飼料添加などを行い、微生物相の改善を念頭に入れることが重要でます。それによりEMを優占させ、有害菌の活動を抑え込み、畜舎内の微生物環境を整えることができます。性急な効果のみを求めて判断し、結論を出さないように心がけて下さい。
EMの導入適期
原則として導入時期はいつでもよいですが、悪臭抑制効果を確実にするには春先(2~3月)の、気温が上昇する前が最適です。理由は気温上昇にともない、腐敗菌も増殖し始めるので、その前にEMを散布することなどによりEMの占有率を高めることにあります。
EMとは
EMとはEffective Microorganisms(有用な微生物群)の頭文字をとった略語のことです。
EMは、琉球大学農学部の比嘉照夫教授が開発したものです。
EMは空気の嫌いな嫌気性菌と、空気の好きな好気性菌など働きの異なる乳酸菌群・酵母群・光合成細菌群・発酵系の糸状菌群・グラム陽性の放線菌群等を複合培養したものです。これらの微生物は自然界に広く生存しており、ほとんどの菌種が食品加工などに利用されていますので人畜無害です。
EMは開発以来、微生物土壌改良資材として水稲・野菜・果樹などの栽培に利用され、収量・品質向上などに活用されてきましたが、糞尿の悪臭公害問題を抱えた畜産業でも、悪臭抑制に大きな効果を上げることが確認され、急速に普及が進んできました。 現在では悪臭抑制効果だけでなく、家畜の病気やストレスの軽減、乳質・肉質・卵質の向上、ハエの発生軽減、牧草の増収、サイレージの品質向上など、様々な効果が確認されています。
畜舎環境における微生物相のバランスと効果
土壌及び生活環境には多種多様な微生物が存在しています。人間は、昔から有用な微生物を利用して食品加工などをしています。例えば酒、味噌、しょうゆ、チーズ作りなどで、乳酸菌、酵母、麹菌などを利用しています。
また反対に、自然界には動植物に病原性のあるフザリウムや大腸菌などの微生物も数多く存在します。
大部分の微生物は、本来動植物に対して無害ですが、その置かれた環境条件により有害作用を起こすものがあります。例えば、畜産における鶏のクロストリジウム感染症は、他の細菌との複合感染の中で発生します。黒死病をおこすコクシジウムも大腸菌の伴随菌で、大腸菌がいないと害を起こすことはほとんどないと言われています。
有害菌が、優勢となったところで初めて害を及ぼす、このような菌は「日和見菌」と呼ばれます。
従って、個々の微生物の性質ではなく、微生物の群としての組成が重要になります。
微生物群の中に有害菌が多ければ、微生物群全体が有害な存在となり、逆に、有用菌が多ければ群全体が有用な存在となり得るわけです。
実際には、群全体の中の有害菌、あるいは有用菌の絶対数は少なく、わずかな微生物バランスでその方向性が決まってしまいます。また一般に有用菌より有害菌の方が繁殖力が旺盛であり、通常の環境下では有害菌の働きが勝るため、悪臭の発生や病気の原因となる訳です。
例えば、生ゴミなどは腐敗菌によって腐るのが一般的であり、排出された家畜糞尿も腐敗の方向に向きます。ところが、ここで有用菌が優占する環境を作ると、生ゴミや家畜糞尿なども腐敗ではなく有用発酵へと進むことができます。
これは悪臭の出ない発酵した状態であり、EMのような有用菌を増やすということによって、このような状態を作り出すことができるのです。
畜舎におけるEMの活用メリット(概念図)
●【養鶏の場合】
●【養豚の場合】
●【酪農の場合】
【動画で見るEMの畜産利用】
●【EM畜産 利用編 00】プロローグ
●【EM畜産 利用編 01】EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方・使い方
●【EM畜産 利用編 02】EM活性液の作り方・使い方
【EM 畜産利用編00~11】<すべてをYoutubeで見る>
【資料ダウンロード】畜産マニュアル<養鶏編><養豚編><酪農・肉牛編>
養鶏、養豚、酪農での、EMの効果と活用方法が、PDFでダウンロードいただけます。用途別の詳しい利用方法は、各マニュアルをご参照ください。
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畜産マニュアル養鶏編
PDF 3,797KB -
畜産マニュアル養豚編
PDF 3,913KB -
畜産マニュアル酪農・肉牛編
PDF 12,528KB